作成した遺言書の保管について
遺言書を書くにあたって、「作成した遺言書をどこに保管すればよいのか」というのは多くの人が頭を悩ませる問題でしょう。
公証人が作成する公正証書遺言の場合は原本を公証役場で保管してくれるので安心ですが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は遺言者自らが責任を持って保管しなければなりません。
「遺言書の内容を知られたくない」といった理由から本人以外誰も知らない場所に厳重に保管している人もいらっしゃるでしょうが、それだと自分の死後に遺言書を発見されないまま法定相続や遺産分割協議など別の方法で相続されてしまうかもしれません。
だからといって、保管場所を家族などに教えてしまえば、利害関係のある誰かに有利な内容に書き換えられてしまったり、不利な内容を知った誰かに捨てられたりしてしまうといったリスクも出てきます。
遺言書の保管先とそれぞれのメリット・デメリット
遺言書の保管先として、まず頭に浮かぶのが自宅です。
金庫や鍵のかかる机の引き出しなどが一般的ですが、中には仏壇やタンスの奥にしまい込んでいるという人も見られます。
自宅で保管するメリットとしては、死後に発見される可能性が高いということです。
また、保管の費用が一切かからないのもメリットと言えるでしょう。
一方で、生前中に家族に発見され、改ざんされてしまうというリスクも付きまといます。
さらに、火事によって焼失してしまうという可能性も否定できません。
遺言書を銀行の貸し金庫に預けているという人も多く見られます。
確かに、貸し金庫であれば生前に家族に発見されて改ざんされてしまうことはありませんし、火事で焼けてしまうということもありません。
しかし、貸し金庫は利用料がかかります。
また、遺言書が貸し金庫に保管されていることを家族や知人に知らせておかないと、遺言書が発見されないまま相続が行われてしまう危険性もあります。
遺言書を相続権のない第三者に預けるという方法もあります。
信頼できる親友や守秘義務のある弁護士・司法書士といった人たちです。
この場合、自分が死亡すれば速やかに遺言書の内容が実現されるので、スムーズな相続手続きを望む人にはオススメの方法です。
ただし、親友が自分のよりも早く亡くなってしまったりすると遺言書が見つからなくなってしまうといったリスクも否定できません。
また、弁護士や司法書士を利用すれば費用がかかります。
自筆証書遺言を法務局に預ける
令和2年の7月に法律が改正され、自筆証書遺言を法務局に預けることができる新しい制度「自筆証書遺言書保管制度」がスタートしました。
自筆証書遺言はこれまで自分で保管しなければなりませんでしたから、保管場所に困っていた遺言者にとってはうれしいニュースでしょう。
この制度を利用するためには、遺言者本人が法務局へ出向いて申請を行う必要があります。
手続きが終了すると自筆証書遺言とその画像データが遺言書保管所に保存され、遺言者の死後に遺言書の内容を閲覧できるようになります。
この制度を利用することで紛失や盗難、改ざんといったリスクを防ぐことができます。
また、画像データを使用しているので、手続きを行った遺言書保管所以外の保管所からも閲覧することが可能です。
さらに、自筆証書遺言を開封するときに必要な検認手続きも不要になります。
ただし、自筆証書遺言を預ける際に内容をチェックすることはないので、必要な要件を満たしていない場合は遺言が無効になってしまうこともあります。