遺言書とは被相続人が相続人に対して遺産の分配の意思を明らかにするものですが、財産が多大であるほど記載すべき内容が複雑です。
このように煩雑になりがちな相続財産について、一目でわかりやすくまとめたものが、財産目録といわれる一覧表です。
財産目録には保有するすべての資産を記載することが望ましく、土地や建物、預金や借金まですべての財産を記載することで、分割協議が円滑に進められます。
遺言書に財産目録を作成して添えておくことで、相続人同士のトラブルを防ぐことにもつながるでしょう。
財産目録を作成しておきたい理由
財産目録は法的に有効な遺言書を作成するうえで、必ずしも必要な書類というわけではありません。
相続の手続きは財産目録がなくても行えますが、相続財産が不動産や預貯金にまで幅広く及ぶ場合は、円満かつ円滑に相続手続きを進めるためにも役立つでしょう。
さらに、手書きが原則となる遺言書においても、財産目録を作成することで記載する内容を抑えられます。
文書作成の効率化の面でも、資産を多く有する場合には財産目録の作成がおすすめです。
財産目録の書くときに注意すべきこと
財産目録の作成には法的に定められた形式はなく、財産の種類と内容、相続開始時点における価額を記載する程度で十分です。
預貯金について記載する場合には、金融機関名と支店名、口座番号を口座ごとに記載します。
不動産であれば、土地か建物かの種類を明記したうえで、所在地を特定するための地番を正しく記載し、固定資産評価額または相続税評価額を明記しておきます。
財産目録も自筆証書遺言を作成する場合と同様に、すべてのページに作成日と作成者の氏名、押印が必要です。
民法が改正されたことによりパソコンで財産目録が作成できるようになりました
自筆証書遺言は文字通り自筆を原則とする法的書類ですが、遺言書に添付する財産目録については民法の改正によりパソコンで作成することが認められています。
改正前までは膨大な資産をすべて手書きで記さなければならなかったため、遺言者によっては大きなメリットを感じる法改正かもしれません。
パソコンでの作成が可能になったため、財産目録の具体的な書式例をダウンロードできるようなサービスも出てきています。
そもそも書式や様式などに法的な定めはなかったものの、書式をダウンロードできれば財産目録を作成する際の助けとなることは間違いありません。
財産目録とは、あくまでも自筆証書遺言に添付する資料ですから、たとえ記載漏れがあったとしても遺言書が法的に無効になることはありません。
ただしパソコンで作成できる便利さとは裏腹に、慎重なチェック作業を怠りがちです。
記載されていない財産が相続手続きの際に発覚すれば、相続人に余計な負担がかかってしまいます。
このようなミスを防ぐためにも、財産目録の作成および確認は、法律の専門家に委ねると心強いでしょう。